Health Psychology Open
我々は,不安障害やうつの発生予防を目的としたセルフ行動調整アプリケーション「いっぷく堂」を開発し,その適用可能性(アクセプタビリティおよび有効性)を検討した.「いっぷく堂」では,日々の気分や体調の変化についてセルフ・モニタリングを行うと,その日の心身の調子に合わせた行動が提案される.ユーザはその日の朝,表示された質問に回答して心身の調子を登録し,その日の調子に応じたフィードバックと行動提案を受ける.ユーザは提案された行動を実施することが期待されるが,強制ではない.また,インタフェースやインタラクションにおいても強制的な雰囲気を排除するよう努めた.そして夜には,そのときの気分を入力し提案行動の実施結果を報告する.継続的な利用を維持するための工夫として,ユーザとやりとりを行うキャラクタと,ゲーミフィケーションを活用している.継続的に使用することで,ユーザが自分の行動を調整できるようになることが期待される.98 人の成人男女に対し 30 日間のモニターを実施したところ,提案行動の実施による気分の改善が示され,セルフ行動調整システムの適用性が示唆された.また,アプリケーション使用前後での精神的健康度を比較したところ,抑うつ症状に対して有意な改善が見られた.結果を通して,動機づけを持たないユーザに対する予防アプリケーションの可能性および課題についての示唆が得られた.